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花、発見
 氷が張らなくなりました。深田にはいつも水が溜まり、厳寒期には厚い氷が張り、その上を滑りました。当時、ズック靴ゴム底では滑りがよくないので、靴の中央に太い針金を一本通してくくりつけ、スケート靴さながらの履き物で氷上を滑走したものでした。しかし、耕地整理で田に水が溜まることがなくなり、地球温暖化と相まって、氷が張らなくなりました。勢い余って薄氷を破り、泥だらけの足で家路についたのは、今を間氷期とするなら、当時は氷河期さながらの時代の出来事であったような気がします。何かタイムスリップをした光景を懐かしみながら、冬の朝、休耕田の畔際に目をやると、冬枯れを起こした、刈り忘れた稲のような群れが目立っていました。カンガレイです。
 
紹 介
 カヤツリグサ科に属し、草丈は1.5メートル、初めて聞く者にとっては外来種と思われがちですが「寒枯藺」の漢字が当てられ、アジア地域に広く分布し、日本でも古来から生息する水辺に生える植物です。カンガレイ、サンカクイ、ホタルイなどは「イ(藺)」と名がつきますが、実はカヤツリグサの仲間です。先の尖った緑の針状の茎を持ち、茎の先の少し手前で、茎から割って出たように、黄色いコンペイトウのような花を咲かせます。では花から先はまた茎かといえば、そうではなくて、花を包み込む敷物の部分に相当します。
 日本でも古くから分布をし、山城地方の水辺の至る所で群れをつくっていたのですが、今では木津川上流の一部でしか見られなくなりました。絶滅危惧植物の仲間に入ってはいませんが、その内その仲間に加わる植物だと思われます。
 
環 境
 カンガレイやホタルイは、畳表に使われる「イ」と形状はよく似ていますが、全く科を別にします。イグサ科に属する「イ」は、畳文化の復権と相まって、ロハス(健康と持続性のある生活様式)生活が叫ばれる時代の寵児になっています。
 新畳の部屋に入った時、鼻の奥に引っかかるような、少し甘い匂いを経験されたことがあるでしょう。バニリンです。あのアイスクリームの香料に使われるバニラの香気成分が、心身をリラックスさせる効果があります。
 小学校高学年に計算問題をさせたところ、普通部屋に比べて畳部屋の方が、20%正答率が高くなったという実験結果があります。また、水虫になりにくいとか、足の裏の臭いがしなくなるなど、イグサには抗菌作用があるといわれています。
 カンガレイには、残念ながら、このイグサの効果は無いとされていますが、生活に植物が取り入れられる文化を古くから支えてきたことは間違いないでしょう。
 
今後のつきあい
 「夢語る 子らの瞳や 冬木の芽」、佐藤 輝
 氏の詠んだ俳句。春を待つ冬芽を、子どもの瞳の奥に潜む無限の可能性にたとえて、キラキラ輝く夢が語られました。夏場は青々と他にまさる勢いで伸び続けたカンガレイ、真冬の何とも物悲しい枯れた風情を、あまり見たくはないものです。この枯れ姿のカンガレイの株元を割ってやると、淡い緑色の冬芽が顔を出します。冷たい冬の水から、ぬるい春の水を感じて、一気に伸びてやろうと、今を堪え忍んでいる冬芽の健気さがそこにありました。
 冬の植物たちは「静」の状態にあります。枯れることは死を意味することではなくて、次の「生」への準備をすることです。「生」への準備を絶つ行為によって絶滅の危機が訪れます。冬の風景を眺めながら、その静けさに秘めて輝く緑の冬芽に、延々と続く生命力を知るべきでしょう。


 

■バックナンバー
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