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花、発見
 冬場に荒起こしした田に水を入れて、畔道のゆるくなった所を土で厚く固めていきます。畔際に水を張り、畔塗りの準備に取りかかる4月の半ばにさしかかった頃です。畔道に通じる山ぎわの切り崩しの道端に、ビロード地の深紅の花が、しおらしく小首を傾げるように群れをつくっていました。オキナグサです。
 
紹 介
 キンポウゲ科に属し、草丈20〜30センチ、茎も葉も白い毛でおおわれ、全体が白く見えます。花弁ではなくて6枚のがく片で花を形づくり、がく片の紅い内側に雄しべや雌しべをもち、外側はやはり白い毛でおおわれています。うなずくように背を曲げる姿を翁(おきな)にたとえたのかもしれません。あるいは、花が終わり、果実がまるく集まり、大振りの白い毛でおおわれる姿を白髪の老人に見立てたのかもしれません。
 
環 境
 以前この山城地域でもしばしば見ることのできたオキナグサは、現在、京都府のレッドデータブックによると「絶滅寸前種」に分類されています。このオキナグサの属するキンボウゲ科には花の美しいものが多くあります。
 オキナグサに比べてひと月ふた月早く姿を現すフクジュソウも絶滅寸前種です。正月に顔を出すめでたい花ということで「福寿草」の名がつけられています。
 オキナグサよりもひと月ふた月遅く花がみられるリュウキンカも絶滅寸前種です。花茎を立てて金色の花をつけるので「立金花」の名がつけられています。山城地方ではエンコウソウとよぶ地域もあります。いずれにしても、キンポウゲ科の花たちは、山林や林縁地が緑で繁茂するまで、多くの彩りで楽しませてくれます。
 このオキナグサの群生地を大切にしていたのですが、わたしの記憶では30年前頃には消えていたように思います。今でも代掻きの準備にその道を通る時は、車を止めて、今は無きオキナグサの亡霊に会いに行きます。
 道はアスファルト舗装がなされ、往来は激しくはないけれど排気ガスを浴びせられ、生息するにはつらい条件が重なったのかもしれません。山城地域のススキ野原で、以前、見かけたという報告も受けています。
 
今後のつきあい
 万葉集に登場します。
 「芝付きの みうら崎なる ねつこ草 あひ見ずあらば 我恋ひめやも」
 この「ねつこ草」がオキナグサに相当するそうですが、出会わないでいたら恋しく思うだろうか、いや、出会ってしまったばかりに恋い焦がれて夢中にしてしまうオキナグサの魅力を言い表しています。大切にしていた私にとっては、オキナグサのもつ魔力を見事に言い当てています。やっと出会えることができたとしても、翌日には盗掘によって堀り跡だけが残されていたというむなしいエピソードを聞いたことがあります。生育環境の急激な変化でオキナグサは消えつつあることは間違いありませんが、目先の欲に心を奪われた人々が絶滅に追いやっている事実は否めないと思います。


 

■バックナンバー
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